徒然日記

5月17日 その3554『逢坂誠二の徒然日記』(5251 )

本日の法務委員会の開催が、またしても与野党の合意なしに委員長の職権で決められた。今日は、法務委員会の定例日であり、本来ならば、少しでも質疑をするために与党から7時間の質疑提案があっても良さそうな日だ。ところが提案は4時間。最後の1時間は総理を入れての質疑だという。しかも事前に何の前触れもなく、昨日の理事会で、急遽、提案されたものだ。総理質疑となればそれなりの準備も必要だろうし、通告の時間も欲しいところだが、通告日、当日の提案だ。しかもこの委員会は、あたかも採決を前提とする質疑に思われる。非常に乱暴な提案であり、私から本日の採決がないことを確認させて頂いた。ところが与党からは、本日の採決がないことは、確約できないという。そんな状態で委員会に臨めば、採決を認めたことになり兼ねない。審議をしたいのは山々だが、採決前提の委員会開催は容認できない。それは何故か。大臣の答弁が安定しないことをはじめ、審議すべき事項が山積しているからだ。====これまで法案6条の2第1項の共謀罪そのもののに関し色々と議論を行ってきた。ところが議論すればするほど疑問な点が浮かび上がる。現時点でのこれらに関する未解決の論点は、日記の末尾に例示する。また法案6条の2第2項の不正権益、法案第7条の2の証人買収等については、ほとんど審議がされていない。自公維の修正案は、GPS捜査や可視化が含まれており、それ自体として重要な論点であり、それについても全く審議されていない。我々が提出した別案(組織的な人身売買と詐欺)も今後の審議対象だ。これほど積み残しがあり、今日の採決には当然、応じられる状況にはない。何とも混乱した1日になりそうだ。さあ今日も、確実に前進します。==  2017.5.17  ====日記本文以外の現時点での未解決論点の例==

■共謀罪の要件について

第1 組織的犯罪集団の意義、一般人が対象にならないかという問題

1 「団体」の定義 

1. 「団体」の定義のうち、多数人とは何人以上か。二人以上でよいのか
2. 「団体」の定義のうち、「継続的結合体」とはなにか
3. どの程度の時間継続していることが必要か
4. 将来継続することを想定した当初の段階でも「継続的結合体」といえるか
5. 「組織」の定義のうち、「指揮命令に基づき」とはなにか
6. 「指揮命令に基づき」とは上意下達の関係がなければならないか
7. 「指揮命令に基づき」とは真に対等な関係は該当しないか
8. 「指揮命令に基づき」とはどの程度具体的な指揮命令が必要か
9. 「あらかじめ定められた」の「あらかじめ」とはいつの段階を言うのか
10. 「あらかじめ」とは現場で任務分担を決定する場合は外れるということか
11. 「反復して」とは何か
12. 「反復して」は一回目は団体とは言えないのか。それとも、反復することが想定されていればいいのか
13. 「団体」は、その場での犯罪の共謀をする場合は含まれないか
14. 含まれないとすれば、どの要件が欠けるのか
15. 「団体」の中にさらに「団体」があるということがありうるのか。例えば、会社などで会社法人全体が「団体」である場合に、その中の一部部署のメンバーが別の「団体」ということがありうるか
16. ないとすれば、それは条文上どの要件が欠けるのか
17. 完全に対等な立場の三人の人物が爆破テロを計画した場合、指揮命令に基づいておらず、「団体」ではないから、共謀罪の対象にならないということか
18. そのような法律で、テロ対策といえるのか
 
 
2 「組織的犯罪集団」の定義

19. 「テロリズム集団」とは例示であり、「組織的犯罪集団」は「テロリズム集団」に限定されていないということでよいか
20. 「組織的犯罪集団」とは、テロ組織、暴力団、薬物密売組織といったもの以外には該当しないという答弁があるが、それでよいか
21. 条文上、これらの組織に限定されるという根拠は何か
22. 「対象となる団体を,テロ組織,暴力団,薬物密売組織,振り込め詐欺組織といった重大な犯罪を行うことを目的とする組織的犯罪集団に限定することを検討中であります。」という答弁があるが(衆議院法務委員会3月7日金田国務大臣)、条文では限定されていないということでよいか
23. 破防法の規定を参考にするなど、テロ組織、暴力団、薬物密売組織、振り込め詐欺組織などに限定されるよう、定義を定めることは可能ではないか
24. 「組織的犯罪集団」の定義のうち、「結合関係の基礎」とはなにか
25. 「「共同の目的」とは、結合体の構成員が共通して有し、その達成又は保持のために構成員が結合している目的」(4月19日衆議院法務委員会 林政府参考人)であるという答弁があるが、当該団体構成員全員に目的が共通であることが必要か
26. 結合関係の基礎としての共同の目的とは、その目的がなかったら構成員が組織的犯罪集団から抜けるというほどの共通の目的でなければならないという答弁があるが、そのような要件の条文上の根拠は何か
27. 条文上明らかではないから、条文に明示すればよいではないか
28. なぜ条文に明示できないのか
29. それとも、ある団体の構成員のうち、一部に「結合関係の基礎としての共同の目的」を有しない構成員がいる場合、その構成員を除いて、他の構成員が「結合関係の基礎としての共同の目的」を有する団体とされることがあるのか
30. その場合、共通する目的を有する構成員のみが「結合関係の基礎」が共通である別の団体とされるのか
31. 結合関係の基礎としての犯罪目的について、違法性の認識は必要ないか
32. 「その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるもの」とは、団体の目的が複数あり、その一つの「共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行すること」であり、他に正当な目的がある場合には該当しうるのか
33. 該当するとすれば、「他の正当な目的」と犯罪目的の関係がどのような場合に、該当しうるのか
34. 他の正当な目的が主であり、犯罪の目的が従の場合は成立するのか
35. 他の正当な目的が主であり、かつ、犯罪の目的も主である場合は成立するのか
36. 犯罪の目的が主であり、他の正当な目的が従である場合は成立するのか
37. 当初は正当な目的の団体であり、途中から犯罪目的を持つようになった場合、すなわち、団体の目的が一変した場合、組織的犯罪集団に該当しうるか
38. 該当しないとすれば、条文上の根拠は何か
39. 一変した場合に組織的犯罪集団に該当しうるとすると、その団体の構成員の中に、犯罪目的に一変したことを知らない人がいることも想定される。その場合、その知らない人は、組織的犯罪集団の構成員なのか。それとも、知らない人を除いた他の人のみが組織的犯罪集団なのか
40. 一変したことを知らない人は「重大な犯罪を目的としたその構成員として集まっているわけではない」ので組織的犯罪集団の構成員ではないという趣旨の答弁があるが(衆議院予算委員会第三分科会2.23 金田国務大臣)、一変した場合は、「組織的犯罪集団」の構成員にあたるかどうかは、「重大な犯罪を目的として集まっているかどうか」という基準で判断することになるか
41. であるとすれば、たとえば正当な団体の結合関係の基礎としての共同の目的が犯罪目的に一変した場合、当該団体の内部には、組織的犯罪集団の構成員とそうではない構成員がおり、その判断基準は「重大な犯罪を目的として集まっているかどうか」ということになるが、それは構成員の内心の問題であるから、組織的犯罪集団の構成員かどうかは、捜査しなければわからないということになるのではないか
42. その場合、結局、組織的犯罪集団にかかわりのない一般人が捜査の対象になるのではないか
43. 一変した場合について、「もともと正当な活動を行っていた団体については,通常団体の意思決定に基づいて犯罪行為を反復継続するようになるなどの状態にならない限り,組織的犯罪集団に該当すると認められることは想定しがたい」という答弁があるが(衆議院予算委員会2月27日安倍内閣総理大臣)これは変わらないか
44. 「犯罪行為を反復継続する」とあるが、正当な目的の団体が、共同の目的を持って犯罪を行うようになった一回目の犯罪については、「組織的犯罪集団」に該当しないのか
45. そうだとすれば、条文上の根拠は何か
46. 条文で明示的でないため、条文に明示しないのか。しないとすればどうしてしないのか
47. 「犯罪行為を反復継続する」とあるが、正当な目的の団体が、共同の目的を持って単発で犯罪を行うことを計画した場合、「組織的犯罪集団」に該当しないのか
48. そうだとすれば、条文上の根拠は何か
49. 条文上明らかではないから、条文に明示すればよいではないか
50. なぜ条文に明示できないのか
51. 「もともと正当な活動を行っていた団体が一瞬にしてその団体の性格を変えるようなことを想定していたものではございませんので,その性格の変化に相当の時間を要するのが通常であることを前提といたしまして,その性格がすっかり変わって,結合の目的が犯罪の実行をすることにあると認められない限り,組織的犯罪集団とならない」という趣旨の答弁があるが(3月7日衆議院法務委員会 林政府参考人)、この答弁は変わらないか
52. 性格の変化に相当の時間を要するとあるが、どの程度の時間を要するのか
53. 性格がすっかり変わることが必要とあるが、正当な目的と犯罪目的が併存することはあり得ないということか
54. これは条文上の根拠は何か
55. 条文上明らかではないから、条文に明示すればよいではないか
56. なぜ条文に明示できないのか
57. 組織的犯罪集団の認定において、当該団体の連絡手段(コミュニケーションツールは限定がないということでよいか
58. 「正当な事業活動を行っている一般の会社につきましては、通常、結合関係の基礎としての共同の目的、それは犯罪を実行することにあるとは認められませんので、毎年脱税を繰り返しているというだけで組織的犯罪集団に当たるということはない」(4月14日衆議院法務委員会 林政府参考人答弁)という答弁があるが、これは、「組織的犯罪集団」にあたりえないということなのか、それともあたる場合があるのか。
59. 該当する場合があるとすれば、それは、他にどういう状況が必要なのか
60. 毎年脱税を繰り返している担当部(経理部など)それ自体が組織的犯罪集団になるということもないか
61. それは条文上の根拠は何か
62. では、同じ事情で、正当な事業活動を行っている一般の会社が、他方で、拳銃の製造や組織的殺人を行っていた場合も「組織的犯罪集団」に該当しないのか。
63. 該当するのであれば、脱税と拳銃製造や殺人で何が違うのか。
64. 国民が心配している「テロ」は、ISなどであるが、ISが組織的犯罪集団にあたるかどうかは明確に言えないということでよいか
65. 過去に組織的な犯罪集団の実態がある団体の具体例があるのか
66. 組織的犯罪集団は、二人の場合は該当しないということで良いか
67. それはなぜか
68. 二人の場合でも、一人が抜けた場合にも、後に誰かが団体に加盟することが想定されている場合もありうるから、二人でも該当しうるのではないか
 
3 一般人が「組織的犯罪集団」とされる可能性があるか

69. 一般人の定義は、「組織的犯罪集団とか関わりがない人」であり、「通常の社会生活を送っている人」であり、何らかの団体に属していない人や、通常の団体に属していて通常の社会生活を送っている人は捜査の対象とならない、つまり、被疑者として捜査されることはないということでよいか
70. 通常の社会生活を送っている一般の人が組織的犯罪集団に関与することも、関与していると疑われることも考えられない(4月21日衆議院法務委員会 金田国務大臣答弁)ということでよいか
71. 通常の団体が組織的犯罪集団に一変することがありうるとのことであるが、その場合、ある団体の内部に、犯罪を目的とすることで集まった構成員とそうではない構成員がいる場合もありうる。捜査をしなければ、ある人が組織的犯罪集団の構成員かどうかはわからないのではないか。そうすると、犯罪目的を認識していない一般人が捜査の対象になるのではないか
72. ある人が組織的犯罪集団の構成員かどう、また、組織的犯罪集団にかかわりがあるかいなかは、捜査をしなければわからないではないか。したがって、一般の人も捜査の対象となるではないか
73. 「6条の2第1項は、組織的犯罪集団の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者」が罪となる。この「計画した者」は、団体の構成員以外の人もありうるではないか
74. 「組織的犯罪集団の構成員でなくても、実行部隊としての組織の一員であればよい」(5月12日衆議院法務委員会 林政府参考人)という答弁があるが、条文上の根拠は何か
75. 条文上明らかではないから、条文に明示すればよいではないか
76. なぜ条文に明示できないのか
77. 6条の2第2項は、組織的犯罪集団以外の人でも、成立するのではないのか
78. 6条の2第2項のうち、「不正権益」とは何か
79. 6条の2第2項のうち、「不正権益を維持し」とは具体的にはどういう場合か
80. 6条の2第2項のうち、「不正権益を拡大する」とは具体的にはどういう場合か
81. では、およそ団体に所属していない一般人であっても、組織的犯罪集団として捜査の対象になることはありうるではないか
82. 全くの一般人が、捜査機関の誤りによりテロ等準備罪を犯したとして起訴され、無罪判決になった場合、当然、一般人が捜査されたことになる。井田参考人もこのことは認めている。こういうことは他の一般の犯罪と同じように起きるではないか。
83. これに関し、金田大臣は、「捜査の結果不起訴となったり、裁判で無罪になる場合はありうる。そのような方々は組織的な犯罪集団にかかわりのない方がであることにはならない」(衆議院法務委員会4月28日)と答弁した。これでは結局、一般人が捜査の対象にならないのではなく、捜査の対象になった人は組織的犯罪集団かわりがあり一般人ではないということになるではないか
84. 捜査の前段階、行政警察活動としての調査は、これまでと変わらず行われ、一般人も対象になるということで良いか
85. 捜査の端緒の約9割は通報であるが、一般人がテロ等準備罪の犯罪の嫌疑があると通報されれば、捜査機関はその一般人を捜査し、嫌疑の有無を確認するのではないか
86. 実行準備行為について、「実行準備行為の認定に当たっては、客観証拠や供述の裏付けの証拠の有無、内容が重視されるものと考えられ、」「当該行為が計画に基づくと認められるか否かに加えて、当該行為をしている者の携帯品、当該行為をしている際の状況など、外形的な事情から、花見目的か下見目的か区別される。外形的にも下見目的であったことが証拠上明らかにならなければ、実行準備行為とは認められない。」(4月28日衆議院法務委員会 金田国務大臣)という答弁がある。実行準備行為も構成要件だとすれば、捜査をして証拠が明らかにならなければ、ある行為が実行準備行為か否かわからないということになる。そうだとすれば、捜査をした結果、ある行為が実行準備行為ではないことがわかり、捜査対象が一般人であったことがわかるということもあるのではないか
87. 告発があれば、犯罪捜査規範67条で、「捜査を行うよう努めなければならない」。一般人がテロ等準備罪の告発を受けた場合、捜査の対象になるではないか
88. 「一般の人は告発されても捜査の対象とはならない」(5月8日 衆議院法務委員会金田国務大臣)という答弁があるが、その条文上の根拠は何か
 
第2 対象犯罪について

1 立法事実はなにか

89. 刑事法であるから、対象犯罪は立法事実との関係で考える必要がある。テロ等準備罪を必要とする具体的立法事実は、サリン、ハイジャック、サイバーテロ以外にあるのか
90. 水道に毒物を混入する際の毒物の準備が処罰できないということが自民党内で言及されているが、殺人予備罪や毒物劇物取締法でなぜ処罰できないのか
91. サリン事案について、「サリン等に当たらない薬品を用いた大量殺人を計画することも想定されるが、常に殺傷能力の高い化学薬品の入手が犯罪になるとは限らない」(1月30日参議院予算委員会 金田国務大臣)という答弁があるが、殺人予備罪で処罰できるではないか
92. 殺人予備罪は、「構成要件が実現される相当の危険性があるとまで言い難い場合が多」く、殺人予備罪が成立しない場合があるとすれば、予備の前段階である計画段階でも、当然、構成要件が実現される相当の危険性がないのでないか
93. その場合、結局、殺人予備が成立しないのと同様に、テロ等準備罪も成立しないのではないか
94. 仮に、殺人予備罪が成立せず、テロ等準備罪が成立するとすれば、それはなぜか
95. ハイジャック事案について、ハイジャックのために航空券を予約した場合、航空機強取の予備罪が成立するではないか
96. 構成要件実現のため、客観的に相当の危険性が認められないとして航空券を予約する行為が予備罪に当たらないのであるとすれば、予備罪の前段階にあるテロ等準備罪も、当然相当の危険性が認められず、犯罪が成立しないのではないか
97. 航空機強取予備罪が成立せず、テロ等準備罪が成立するのであれば、それはなぜか
98. 共謀罪が成立する事案では、予備罪の相当の危険性があるということになれば、個別に予備罪を加えればテロ等準備罪を設けなくてもテロ防止等の目的は達成できるではないか
99. そのような方法のほうが、謙抑的であり、望ましいではないか
100. 結局、テロ等準備罪は、構成要件が実現される相当の危険性がない行為を処罰する法律ではないか
101. サイバーテロの事案は、ウイルス作成罪の未遂罪を設けなかったのは、処罰範囲が不当に広がることを懸念したためである。未遂、予備のさらに前段階である共謀段階から犯罪とするのであれば、処罰範囲が極めて不当に広がるではないか
102. 277の対象犯罪について、政府は5つに分類しているという。277のすべてについて、その5つのどれに該当するか(複数にあたりうるのであれば、どれに該当しうるかということでもよい)
103. 法定刑が4年以上のもののうち、組織的犯罪集団が実行を計画することが現実的に想定されるか否かという基準で選択したということである。種苗法は、具体的にどういう犯罪が行われることが現実的に想定しているのか
104. モーターボート競争法は現実的にどういう犯罪が行われることを具体的に想定しているのか
105. 著作権法は現実的にどういう犯罪が行われることを具体的に想定しているのか
106. 絶滅の恐れのある野生動物の種の保存に関する法律は現実的にどういう犯罪が行われることを具体的に想定しているのか
107. 墳墓発掘死体損壊等罪は現実的にどういう犯罪が行われることを具体的に想定しているのか
108. 無許可廃棄物処理業等は現実的にどういう犯罪が行われることを具体的に想定しているのか
109. 保安林でキノコや竹、木の実を採ることもテロ等準備罪が成立するが、組織的犯罪集団が現実的に行うとは想定できないではないか
110. 保安林で森林内の鉱物その他の土砂、岩石など無機物産出物も含まれるとし、その理由として、「暴力団等が、保安林内の土砂を大規模に掘削して盗むことを計画することが考えられる。」(4月28日衆議院法務委員会 金田国務大臣)というが、他方で、「鉱業権によらずにまだ採掘されていない鉱物を採掘する罪」は対象となっていない。この理由として、後者は多額の資本をもとに大規模に採掘することは現実的に考え難いとする。相互に矛盾しているし、大規模な組織力のあるテロ集団に対処する必要性という観点からも矛盾しているのではないか
111. 井田参考人は、「現行法にない計画、準備段階での処罰をかなり幅広く認め、新しい犯罪をたくさん作るから慎重な検討が必要」「キノコ狩りはそぐわない」としているが、上記のことからすれば、対象犯罪は全く慎重な検討がされていないではないか
112. 高山参考人は、「TOC条約の関係で、公権力を私物化する行為が取り締まられるべき」であり、「公職選挙法、政治資金規正法、政党助成法、特別公務員職権乱用罪、暴行陵虐罪」が外れていることが懸念される、と述べる。TOC条約は、これらの犯罪も、公権力を私物化する行為として、組織的犯罪集団が現実に行うことが想定できるとしているはずだが、なぜ、テロ等準備罪の対象犯罪となっていないのか
113. 他国は、一つの傷害罪でも、傷害の程度で複数の罪があり、重い傷害罪のみがTOC条約の対象となり、対象犯罪が限定されている。そのような限定を日本も行えばいいのではないか
114. 司法妨害に関する罪については、なぜ共謀段階で処罰する必要があるのか
115. 仮に既遂まで待てないとしても、予備や未遂段階で対応すればよいのではないか
116. キノコとりをすることだけを目的とする団体は十分考えられるが、その団体は組織的犯罪集団に該当しうるのか
117. その他、税法違反、著作権法違反等、組織的強要罪、組織的信用毀損罪など一般人が犯罪を犯しうる罪が含まれており、一般人が組織的犯罪集団に該当しうるのではないか
 
第3 計画とはなにか

118. 計画とは、「共謀とは異なり、犯行に関する指揮命令や任務の分担を含めて具体的かつ現実的に合意することが必要」(4月19日衆議院法務委員会 林政府参考人)というが、共謀と変わらないとする(2月23日衆議院予算委員会第三分科会 金田国務大臣)答弁と矛盾するではないか
119. 仮にこのような限定があるのであれば、計画の定義をなぜいれないのか
120. 共謀は手段を問わず、メールなどでも共謀が認定されるので、極めて幅広く認定されうるのではないか
121. 「メールを閲覧しただけでは合意ではない」(2月23日衆議院予算委員会第三分科会 金田国務大臣)とされるが、メールを閲覧しただけなのか、それ以上になにかをしたのかは、結局、捜査をしなければわからないため、メールが送信されれば、捜査の対象になるということではないか
122. 暗黙の了解でも共謀は成立するが、閲覧だけと暗黙の了解と、どのように区別するのか。結局、捜査しなければわからないではないか
123. では、メールの閲覧に加えて、どういう行為が必要なのか
124. 「目くばせでは合意とならない」(2月23日衆議院予算委員会第三分科会 金田国務大臣)というが、他方で、共謀の定義は従来と変わらないとしており、矛盾しているではないか
125. 高山参考人は、「計画の成立自体が黙示の合意、順次的な合意、未必的な故意による合意をすべて含むことが従来の判例から推測され、何月何日何時何分に何が起こったということろまでの事実認定は要求されない」とし、判例に照らしても、計画の範囲は極めて幅広いものになるのではないか
126. 共犯者の供述が重要な証拠になるが、引っ張り込みの危険など、冤罪の危険が高くなるのではないか
127. 自首免除もあり、類型的に、冤罪の危険が高い犯罪ではないか
128. 計画を取りやめても犯罪がなかったことにはならないが、殺人罪では、障害という結果が生じていても、中止未遂が成立するが、不均衡ではないか
129. 「計画行為のあと、実行準備行為が行われる前にその計画に係る合意を解消したといえる場合にはテロ等準備罪は成立しない(4月19日衆議院法務委員会 林政府参考人)」また、「構成要件である」(4月19日衆議院法務委員会 林政府参考人)という答弁があるが、条文上の根拠は何か。現在の書きぶりは、実行準備行為は処罰条件であるから、このようなことはいえないのではないか(4月25日高山参考人)
 
 
第4 準備行為について

130. 「準備行為とは、計画とは別の行為であり、計画に基づいて行われ、計画が実行に向けて前進を始めたことを具体的に顕在化させるもの」(4月19日衆議院法務委員会 林政府参考人)というが、TOC条約上、予備罪が「合意及び合意を促進する行為」にあたり、条約締結上何ら問題がないのではないか
131. 誰か一人が準備行為を行えばよく、他の人は、誰かが準備行為を行ったという認識は必要ないのか
132. 準備行為とは、予備行為の前段階の行為であり、それ自体が相当の危険性がなくてよいのか
133. そうだとすれば、結局、テロ等準備罪は、構成要件実現の相当な危険性のない行為を処罰することになるのではないか
134. 実行準備行為が行われていないと捜査できないというが、捜査機関が計画があったことを察知した場合、すでに実行準備行為が行われた後なのか、まだなのかは捜査しなければわからないため、計画をした人を尾行したり聞き取りをしたりと、当然捜査するのではないか
135. また、計画があったことは判明したが、その具体的な内容までは把握できなかった場合、ある行為が実行準備行為かどうか判断できないのであり、捜査しなければ、具体的な計画の内容も把握することができないのだから、捜査するではないか
136. 仮に捜査しないのだとすると、ずっと実行準備行為があったかどうかわからず、捜査できないということになるが、極めて不合理ではないか
137. 仮に、これを捜査と呼ばず、行政警察活動だとするのだとしても、結局は、尾行や聞き取りなどを捜査機関が行うということであり、実質は何ら捜査と異ならないではないか
138. 「実行準備行為が行われていない段階では、テロ等準備罪は成立していないため、強制捜査はできない」(4月19日衆議院法務委員会林政府参考人)というが、実行準備行為が実際に行われたことと、実行準備行為が行われた嫌疑があることは異なり、強制捜査の要件は嫌疑があることであるから、捜査機関がある行為が実行準備行為にあたる可能性があると嫌疑を持てば、仮にその行為が実行準備行為ではない場合でも、強制捜査できるということになるではないか
139. 実行準備行為が行われていないならば強制捜査はできないというのであれば、当然任意捜査も同様にできないはずであるが、「実行準備行為が行われていない段階でも任意捜査を行うことが許される」(4月19日衆議院法務委員会金田国務大臣)という答弁は矛盾ではないか
 
 
 
第5 捜査手法

140. 他の犯罪と同様の捜査手法が行われるとされ、尾行、免許証登録情報の確認、非行歴の確認、指紋の確認、レンタカーやクレジットカードの履歴、携帯電話の使用状況などの照会は捜査令状がなくても一般的に行われている。こういう捜査手法が行える犯罪が277も増えるということであり、国民の権利に対する侵害性が強くなるのではないか
141. 通信傍受法3条1項3号の適用により、本罪が通信傍受法の対象となっているテロ等準備罪については、通信傍受を行うことが可能ではないか
142. 仮に不可能であるとするなら、その条文上の根拠は何か
143. 岐阜県大垣市で太陽光発電事業に関し、警察が住民のセンシティブ情報を収集していたという事件があった。犯罪がない状況ですら、一般人の情報を収集しているのであるから、一般人を対象にしうるようなテロ等準備罪が成立すれば、さらに情報を収集する口実を警察に与えることになるではないか
 
第6 欠陥法であること

144. 277の罪のうち、未遂罪も予備罪もない罪は130ある。これらは未遂も予備の段階も法益侵害の危険性がないという考慮に基づくものであるが、共謀段階で罪とするのは、現行刑法と比較して極めて不整合ではないか
145. 277の罪のうち、未遂罪はあるが予備罪はないものが105ある。これらは、予備段階は法益侵害の危険性がないという考慮に基づくものであるが、共謀段階で罪とするのは、現行刑法と比較して極めて不整合ではないか
146. 組織的犯罪集団が強盗罪の共謀をした場合より、さらに危険性が高まった予備行為をしたほうが法定刑が低いが、それはなぜか
147. 組織的犯罪集団が現住建造物放火の共謀をした場合より、さらに危険性が高まった予備行為をしたほうが法定刑が低いが、それはなぜか
148. 組織的犯罪集団が非現住建造物放火の共謀をした場合より、さらに危険性が高まった予備行為をしたほうが法定刑が低いが、それはなぜか
149. 組織的犯罪集団が激発物破裂による建造物損壊罪の共謀をした場合より、さらに危険性が高まった予備行為をしたほうが法定刑が低いが、それはなぜか
150. 組織的犯罪集団が航空機の強取罪の共謀をした場合より、さらに危険性が高まった予備行為をしたほうが法定刑が低いが、それはなぜか
151. 組織的犯罪集団が発散目的で一種病原体を輸入する罪の共謀をした場合より、さらに危険性が高まった予備行為をしたほうが法定刑が低いが、それはなぜか
 
第7 憲法適合性

152. 計画、準備行為は内心とかなり近接しており、花見のためにある場所に行く場合は罪とならず、下見のときは罪となるとすれば、それは違いは内心のみであり、これは内心を理由に処罰していることになり、憲法19条に違反するのではないか
 
第8 その他

153. 親告罪の共謀罪は親告罪ということでよいか
154. 親告罪の共謀罪も捜査はされるということで良いか
155. 共謀罪の教唆犯が想定できない(5月12日衆議院法務委員会林政府参考人)ということであるが、理論的にはあるということでよいか
156. 想定できないというのはどういうことか
157. 教唆犯は結局計画に含まれる、すなわち、組織的犯罪集団の活動として計画した者ということか
158. 順次共謀もありえ、「計画した者」の範囲が極めて広がるという問題があるではないか
159. 共謀罪の幇助犯が成立するということは、処罰範囲が著しく広がるではないか組織的犯罪集団の外部の人も幇助犯が成立することがあり得るのではないか
160. 集団の外部の人が「計画する場所の提供」など幇助の外形的行為をした場合、犯罪を容易にする認識があるかどうかという内心により幇助犯の成否が決まる。したがって、幇助の外形的行為をした者について、幇助犯として捜査の対象となったが、犯罪を容易にする認識がないことがわかるということがありうる。そうなると、一般人が捜査の対象になるではないか
161. こういう場所を提供するという外形的行為をしたが、提供された人が犯罪の計画を行うことを知らなかった人まで、「組織的犯罪集団にかかわりのある人」というのか

■共謀罪の立法事実について

第1 TOC条約についてとテロ対策について

162. TOC条約は目的にテロ対策について言及がなく、テロ対策の条約ではないではないか
163. TOC条約では、「組織的な犯罪集団」の定義がなされており、「目標が純粋に非物質的利益にあるテロリストグループや暴動グループは、原則として、組織的な犯罪集団には含まれない」とされている。TOC条約はテロ対策の条約ではないのではないか
164. TOC条約はテロ防止関連条約に含まれておらず、テロ対策の条約ではないのではないか
165. TOC条約は21条において、監視をすることによって越境的組織的犯罪を防止する条約となっているのであるから、テロ等準備罪により監視社会になるのではないか
166. TOC条約の締結により、国際的な逃亡犯罪人引き渡しが可能になるというが、それはどういうメカニズムによるのか
167. 現在、日本が逃亡犯罪人引き渡し条約を締結していない国は、日本が死刑制度があるため、締結していないのではないか
168. TOC条約を締結することにより逃亡犯罪人の引き渡しができるというが、死刑制度を理由として逃亡犯罪人の引き渡し条約を締結していない国との間で、逃亡犯罪人の引き渡しが可能になるのか
169. そうだとすれば条文上の根拠は何か
170. 捜査共助が可能になるというが、どういうメカニズムにより可能になるのか
171. 情報収集においては国際社会と緊密に連携することが可能となるというが、具体的にはどういうことか
172. 条約との関係では、どういうメカニズムで、情報収集において緊密に連携することが可能になるのか
173. サミット開催に際し、TOC条約締結がなければサミットに参加できないという要請を国際社会から受けたことはなく、TOC条約がないことは国際社会にとってテロ対策として重要な問題とは考えていないではないか
174. かつてTOC条約の担保法として不可欠と述べていた共謀罪について、今回は277の罪でTOC条約の担保法として十分という見解である。結局、今回の277の対象犯罪でなければTOC条約締結に不可欠ということではなく、政府の判断で批准できるということではないか
175. TOC条約は「組織的な犯罪集団」の定義があるが、法案はこの定義よりもさらに広いものにしている。謙抑的ではないのではないか
176. TOC条約を締結する際に、留保して締結すれば足りるのではないか。国会が留保を付して締結する旨を再度決議すれば、留保して締結できるのではないか
177. 髙山参考人は、「立法ガイド五十一項は、参加罪や結集罪の制度か、共謀罪の制度か、その一つの制度を欠いている国が必ずしもそれを導入する必要はないという趣旨のことを述べており、また、 条約の全体を見ますと、各国は組織犯罪対策として国内法の基本原則に適合するように対処することを求めているのでして、憲法の範囲で対処してくださいということを言っています。」と述べており、共謀罪、参加罪を入れなくても、TOC条約の締結は可能ではないか
178. 日本は共謀共同正犯が認められており、共謀罪類型の罪がすでにあるため、法案の成立がなくてもTOC条約の締結は可能ではないか。
179. TOC条約5条では、「推進するための行為」は「未遂に至らない何等かの行為」であり、予備罪及びその共謀共同正犯は、共謀罪に「推進するための行為」が付されたものであり、これにより、TOC条約を締結できるのではないか
180. 近時、犯罪の認知件数は大幅に減少しているが、他方で警察官は増員している。どうして犯罪の認知件数が減少しているにもかかわらず、警察官が増員されてきたのか
181. テロ等準備罪により犯罪を増やし、警察官の権限を拡大することが目的ではないか
182. テロ等準備罪でテロが防止できるのか。一人で行うテロは防止できないではないか

  
  

皆様のコメントを受け付けております。

  1. おおさか議員05月16日の法務委員会参考人質疑後のブリーフィングを見ました。
    問題点多すぎですね。
    本当にこれを採決して通すのか・・・。いえ、確実に通すのでしょうが。
    その場合は、衆議院ではここまでですよね。
    以前にも意見書で書きましたが参議院はあまりにも政府へ特に総理への攻撃性が激しすぎて審議にならないどころか国会欠席をしまくる可能性があって自分的に非常に怖いです。民進党内でそこはしっかり話し合って連携を。
    アンチ政府を抑え、たとえ強行採決されてしまったとしても問題点を1%でも解決した状態で採決された方がましです。
    皆さん頑張って。明日も確実に前進です。

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