徒然日記
11月15日 その2276『逢坂誠二の徒然日記』
ドイツ政府、ドイツ連邦議会の招聘による
エネルギーシフトに関するドイツ滞在も、
今日5日目が活動最終日だ。
明日は、ベルリン・テーゲル空港から
ウィーンを経由して帰国の途につく。
滞在中の活動日程が密度濃く、
あっと言う間に時間が過ぎてしまった。
この間の活動で得られたものは、
この滞在日数以上に大きなものがある。
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昨14日(活動4日目)も朝から晩まで、
隙間なくベルリン市内を動き回った。
特に昨日は朝昼晩3食ともに
関係者のとの食事会がセットされた上、
その間には、連邦議員との懇談、
さらに団体訪問を行った。
1)エネルギー水道事業連合会
食事会三昧の昨日の日程の中で、
最も印象深かったのは、
エネルギー水道事業連合会での、
シュテファン・クリーガー国際関係担当部長との意見交換だった。
この連合会は、日本で言えば、
電気事業連合会のようなものであり、
電力、ガス、水道など、事業者の連合団体だ。
だから当然、
エネルギーシフトには否定的、
反対だろうとの先入観を持って面談に臨んだ。
この団体がエネルギーシフトに賛成することは、
日本でいえば発電事業者の集まりである電気事業連合会が、
脱原発に賛成するようなものだからだ。
ところがドイツのエネルギー等連合会は、
脱原発に賛成したという。
しかも2011年にドイツ政府が脱原発を決めた2か月前となる、
フクシマ事故の一カ月後に政府に対して脱原発を要請している。
これは驚きの事実だった。
(実はこの採決には、電力事業者は欠席した。
しかし今、再生可能エネルギー推進の取り組みに、
電力事業者は実に前向きに取り組んでいるとのことだ。)
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またシュテファン部長の説明は、
エネルギーシフトに向けた課題が、
実に良く整理された素晴らしいものだった。
再生可能エネルギーを入れると、
発電量の変動幅が大きく、
結局は従来型発電も
維持しなければならないとの指摘がある。
これは日本でも良く言われることだ。
シュテファン部長は、
これらのことを実に分かり易く説明し、
その対策等も明確に示されていた。
対策は次の5点だ。
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・
フレキシブルな発電を実現させる
・
電気エネルギーを貯める
・
需要者側のマネージメントの向上
・
再生可能エネルギーによる
電力サービスシステムへの備え
(具体的にはFITや電力市場の見直しなど)
・
スマートグリッドや送電網整備
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昨日は、
特に新たな電力市場のあり方について
説明があった。
この点、日本の現状と大きく違うものだが、
再生可能エネルギー価格への市場性の導入など、
今後丁寧な勉強が必要な分野と感じた。
日本では導入したばかりのFITだが、
それをいつ、どのように次のステップに進化させるのか。
日本の電力価格への市場性をどう確保するのかなど、
日本で取り組むべきことにも数多く、気づかせて頂いた。
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プレゼンの冒頭で、
「エネルギーシフトは、
東西ドイツ統一後の最大の取り組み」
との認識が紹介されたが、
現状維持を良しとしないで、
新しい時代に冷静に立ち向かう事業者の皆さんの
賢さを教えられた感じがする。
100分近くに渡る懇談だったが、完全な時間不足だ。
再度、訪問して勉強する機会が必要だ。
2)食事会
昨日3回の食事会の様子は次の通りだ。
【ドイツ外務省ペーター・プリューゲル アジア局長との朝食会】
アジア局長との朝食会は、極めて刺激的で緊張感に溢れていた。
冒頭、
ペーター・プリューゲル局長から、
エネルギー問題に限らず幅広く議論したいとの発言があり、
主に次のようなことが述べられた。
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・
アベノミクスで経済が良くなることは喜ばしいが懸念がある
・
第三の矢である構造改革が進まなければ、
日本の長期債務問題は解決しない
・
憲法解釈の変更に注視しているがこれにも懸念がある
・
日本が世界の中で、
その役割を果たすという集団的自衛権の行使容認は、
興味深く喜ばしい
・
しかし、東アジアの皆さんと一緒に考えなければ、
東アジアに対する懸念が生まれる。
ドイツの経験に学んでほしい
・
さらに懸念は領土問題であり、
日韓、日中のトップレベル会談がないことが心配
・
日独関係は問題がない。
来年4月のNPT広島会議に期待している
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アジア局長の日本の外交、
安全保障などについての言及の後、
意見交換を行った。
日本側の参加者は与党も野党議員もいる。
当然こうした問題に対しては意見の違いがある。
アジア局長はそれらを確認しつつ話を聞いていた。
そんな中、日本側与野党間の多少の応酬もあり、
一つ言葉を間違えると厄介なことになる、
そんな緊張感を帯びた朝食会となった。
もちろん、ああした雰囲気に持ち込まずに、
別のやり方もあっただろうと思うが、
日本側の冒頭発言のエッジが効きすぎたため、
若干スリリングなものとなった。
同じ内容を伝えるのであっても、
発言ぶりによって、
当然にその場の雰囲気を変えてしまう。
そんな初歩的なことを確認する実に良い例、
反面教師を目にすることができた。
国際外交だけではなく、
場のリーダーの力、誘導の仕方など、
場の仕切り方についても
多くのことを学んだ90分だった。
【連邦議会環境・自然保護・原子炉安全委員長 エファ・ブリング=シュレーター
議員との昼食会】
エファ委員長は左派党、動物保護などの専門家だという。
次のような発言があった。
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・
気候変動に関心がある
・
二酸化炭素の増加によって、
全てのドアが閉まる
・
原子力発電は、
そもそもリスクが多く代替にはならない
・
日本で原発が無批判で
受け入れられることは理解できない
・
エネルギーシフトのためには、
国民の議論への関与が必要。
それに市民発電所などが活性化する。
地元でお金を出せば、エネルギーへの関心が高まる
・
市民の関与があればあるほど実現しやすいが、
最終処分場の選定はドイツでも苦慮。
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脱原発に対する確固たる意志を強く感じたが、
人を説得するためには意志だけではどうにもならない。
強い意志を裏付ける基礎知識や理論の重要さを
強く感じた90分だった。
【中根猛駐ドイツ日本国大使主催夕食会】
ベルリンの日本大使館はなかなか立派なものだ。
戦前からのドイツと日本の関係などもあり、
そうした現状になっているのだと思う。
中根大使は、
我々のドイツも訪問も終盤に差し掛かり、
その疲れなどを労う意味で、
我々を公邸に招いてくれた。
朝と昼の食事会とは一転し、
緊張感のほぐれた、
あっと言う間の90分だった。
中根大使はじめ駐独日本国大使館の皆さんに
心から感謝したい。
2)日独議連副会長
昨日午前は、連邦議会日独議連の
シルビア・コッティング=ウール副会長と
1時間懇談をしている。
主な発言は次のとおり。
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・
フクシマ事故によって脱原子力が、
党派を超えて成立した
・
再生可能エネルギー80%を目指しているが、
国民の幅広い支持が必要
・
国民は、
自ら発電し販売するという大きな役割を担う
・
原発のリスクは根本的なものであり、
原発輸出は技術の問題ではない
・
原発は失敗の許されない技術であり、
これを人間が扱うことはできない
・
人間は、
失敗の許される技術に頼らざるを得ない
・
2000年に電力事業者とも合意して
原発ゼロを決めたが反省がある。
・
それはエネルギーシフトの取り組みに、
電力事業者も参加できることを入れなかったこと
・
経済やエネルギー事業者と
一緒にコンセプトを作ることは重要であり、
さらに事業者が儲かる仕組みが必要
・
技術立国、産業立国、経済立国でも
脱原発が成り立つことを証明したい。
ドイツはその例たるべく進んでいる。
・
そのために明確な目標と
明確な手段が必要
・
使用済核燃料は
100万年も管理しなければ安全にならず、
寿命70年の人間にはできるはずがない
・
夏に「最終処分場サイト選定手続き法」が成立したが、
選定は簡単ではない
・
化石燃料であれ、再生可能エネルギーであれ、
どのシステムにしてもコストは上がる
・
ならば初期投資は高くとも、将来により安心で、
いずれ安くなる再生可能エネルギーを選択すべき
・
ドイツでは、再処理は禁止されている
・
海洋汚染は未経験の分野で国際協力が必要
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シルビア日独協会副会長の話は、
理路整然とした印象を受けた。
日本の動きに高い関心を示し、
日本の現状について、
多くの話を聞きたがっていた姿が印象的だった。
今年12月には来日するという。
今日もベルリンで
密度の濃い日程が予定されている。
ドイツでの活動の最終日だ。
さあ今日も、しっかりと前進します。
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2013・11・15 Seiji Ohsaka
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