徒然日記

11月23日 その1581『逢坂誠二の徒然日記』



勤労感謝の日の東京、
昨日よりも気温が高めの朝を迎えました。

雲が多少ありますが、
明るく青空も広がっています。

1)保険
原発の損害賠償保険を引き受けるため、
損害保険会社でつくっている
「日本原子力保険プール」(日本プール)が、
東京電力福島第一原発に対する
損害保険の契約を更新しない方針を固めたことが、
報道各社で報じられています。

契約が切れる来年一月十五日までに、
東電は、新たな保険の引き受け手を見つけたり、
1200億円という保険額相当の現金を供託したりしないと、
福島第一原発が無保険の「違法状態」になります。

保険会社の集合体である日本プールは、
重大な事故を起こした福島第一は、
通常の原発とは比べものにならないリスクがあり、
1200億円もの保険は引き受けられないと判断したようです。

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「日本プール」は、
国内で認可を受けている
損害保険会社23社で構成されています。

原発で保障すべき保険金額が多額にのぼるため
こんな分散方式をとっているのです。

さらにリスク分散するため海外の保険会社にも
再保険しているとのことですが、
今年7月、海外の複数の保険会社から
契約を続けるのは難しいという意向が示されたこともあり、
日本プールでは保険契約を
継続すべきかどうかの検討を続けていたようです。

検討の結果、継続は困難と判断したのです。

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経済学者 伊東光晴先生の論文
「経済学からみた原子力発電」(『世界』2011年8月号)
に次のような意味のことが書かれています。

マンモスタンカーは事故が起きた場合の損害額が大きく、
損害保険全額を引き受ける保険会社が存在しない。
そのため保険金額をこえる被害は、
船会社自身が保障せざるを得ず、
結果として、マンモスタンカーは航行できないこととなった。

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つまり市場での企業活動は、
保険会社がそのリスクを
保障できるかどうかにかかっているのです。

民間損保会社がリスクを保障できる範囲でなければ、
市場における企業活動は成り立たないのです。

民間保険会社の引き受け手がないが、
それでも企業活動を続けるとすれば、
企業自らがリスク保障するか、
公的機関がその役割を担うしかありません。

企業自らがリスク保障をすれば、
その費用は膨大なものとなり、
専門の損保会社が
引き受けないほどのリスクなのですから、
たぶんその企業の活動は
市場では成り立ちえないのだと思います。

また政府等、公的機関がリスクを保障するならば、
それは民間企業活動とはいえる存在ではありません。

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今回の1200億円の民間損保引き受け継続問題以前に、
現行制度の中でも、
原子力発電所の1200億円を超える損害額は、
ある一定のルールのもとで
政府が保障する仕組みになっています。

つまりこうした会社を、民間私企業的にみなして、
原子力発電のコスト問題を論ずることに
無理があると私は思っています。

事故が発生した際のリスク保障費用に加え、
建設のための資金、発電所立地対策費用、
さらに廃炉費用などが、
適切に発電コストに含まれているかどうか不明のままで、
コスト計算をしているのですから、
それをコストと呼んでよいかどうか、
はなはだ疑問なのです。

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今回の日本プールが、
損害保険を引き受け継続できないという問題は、
色々な問題を気づかせる引き金になります。

さあ、今日もしっかりと前進します。
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   2011・11・23 Seiji
Ohsaka

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皆様のコメントを受け付けております。

  1. このニュースはあまり伝わってないですね。逢坂先生の指摘はいつも非常にわかりやすく、もっと多くの人に考えて欲しいと思うことばかりです。体を大事に頑張ってください。

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